ずっとずっと、親なんかいない人生を歩いてきたんだ。
みんなとは違う人生を歩いてきた。
いつも周りの親子たちの背中を見ているだけだった。
いいなあって、見てるだけだったの。
「わ……!」
そのとき、正面から違うぬくもりが包み込んでくる。
父親だという男は目の前にいるから、いま私を抱きしめてきた存在は別の誰か。
初めて感じる、あたたかさ。
同時にそれは、ずっとずっと求めつづけてきたもの。
「江架…っ」
「っ…、」
それはまるで、迷子になって帰ってきた娘を心配する母親のようで。
そういうものも私はいつだって見ているだけだったのに。
味わえるなんて、こんな感じなんだって……涙がぜんぶを邪魔してくる。
「……だ、れ」
「…だれだと思う?」
「っ…、だれっ、…だれえ……っ」
おかしいね、だれ、なんて。
わかってる。
どうしてか、わかってる。



