ふるえる唇をきゅっと結んだ私の頭、わしゃわしゃと撫でる手。
スッと腰をあげて、私は走った。
私、こんなことしてる場合じゃない。
なにをしていたんだっけ……。
思い出さなくちゃいけない大事なことを忘れてる気がする。
「────江架ちゃん」
あふれる涙を拭いながら走った先に、今度は本物が現れる。
それは、たったいま話していた少年が大人になった姿の男性が、私を愛しげに見つめていた。
「っ、………、」
遺影に写ってたひとだ───…。
近づけなかった。
どうすればいいのか分からなくて、足がすくむ。
どんな顔をして、どんな目で、私はあなたのことを見ればいいんだろう。
「驚かせちゃったよな。ここは君の魔法のなかだ」
「…わたしの…魔法の、なか……?」
「そう。俺は君の───…父親だ」
信じられるわけがない。
はいそうですか、なんて言えないよ。



