ハオさんの声など、聞こえてもいない。
スルーしているわけじゃなく、気にもしていなければ雑音とおなじ扱いなのだろう。
わざわざコバエを丁寧に振り払う人間のほうが珍しいように、ただただ眼中にないんだ。
「…俺たちは価値ナシって言いたいんですか」
「そうだ」
やっと答えてくれたと思えば、つめたい3文字。
ハオさんはこめかみにピキリと血管を浮き立たせた。
「だが、ここまで頑張った努力だけは褒めてやろうと思ってな。お前らのなかで生き残った唯一がせめて連れていく価値がある1人だ」
「……ころし……あうって…、」
「なんだったらお前だけは逃げていいぞローサ。…女だからな、お前は」
「っ…!」
たぶん、ローサさんにとっていちばん彼から言われたくなかった言葉。
そこをあえてつつくみたいに強調された言い方だった。
女だからと贔屓はされたくないと言っていて、そんなものはしないと師匠は伝えて。
そんな師匠に彼女は憧れと尊敬を抱いていた。



