「……困るな」
「こ、こまる…、って、」
「僕もかなり我慢してるんだよ」
甘くかすれた、猛毒のような忠告。
そんな顔……するんだ。
いつも穏やかで、あまり感情の起伏に流されなくて、特訓しているときも理性だけはしっかり保っている彼が。
今はそんな自分を捨て去りたいと本能が喚いているかのような、静かなる獣が見えた。
「わ…っ、……あ……」
ぺたり。
魔力切れというわけじゃない。
なんかもう、圧に押された…。
その場に座り込んでしまった私をふわりと抱き上げて、じっと見つめられるという追い討ち。
「ねえ…江架。江架は僕のこと───」
「こんなところに呼び出してなんの用だ」
やってきた人の気配、止まった足音、代わりに聞き慣れた声。
ローサさん……?
どうやらひとりじゃないみたいで、ルス先輩は私を抱えながらも身を隠すように木陰に座り込んだ。



