お父さんとお母さんのこと、ぜんぜん知らない。
きっと師匠のほうが知っている。
私が1歳のときに死んじゃって、それからおばあちゃんと2人だけだったから。
「師匠、」
「…なんだ」
「私って、お父さんとお母さん……どっちに似てる?」
一定のリズム感を出していたフォークの動きが止まった。
なにを考えているんだろう。
なにを思い出しているんだろう。
スッと上がった顔、私を捉えた目。
そしてそれは、どんなものよりも温かな眼差し。
「目元は父親。ただ、全体の雰囲気は母親。性格は……どっちかっつうとシド兄ちゃんかもな。セーカ姉ちゃんは穏やかだった」
「……それって私が穏やかじゃないって言いたいんだ」
「ふっ、そうは言ってねえが。もし穏やかだったら水は手動だろ」
「むっ」
今はこれだけで十分。
もっと教えてって欲張りにもなりたかったけれど、それだけで満足した私に負けちゃった。
ニッと笑って、湧いてきた嬉しさは食欲に預けようと思う───。



