「…すみません。ミルクを…譲ってはいただけませんか」
それから数日間を離れた場所で過ごした。
今のおれが使えるワープ魔法といえば物を運べるくらいで、町の空気を吸いたくて江架を抱っこ紐でつないで山を下った日。
「んん?…ちょっと待っててね、ミルクだけでいいのかい?」
「…はい」
おれたちのことを身寄りのない戦争孤児だとでも思ったのだろう。
牛を飼い慣らしていた遊牧民は優しい顔をして、快くミルクを分け与えてくれた。
「あーっ」
「…うん。戻ろう江架。家に…帰ろう」
お父さんとお母さんが待ってる。
シド兄ちゃんとセーカ姉ちゃんが待ってる。
数日前の出来事が嘘のように、爆発音も熱風も止んでいた。
魔法で静めているんだろう。
町人たちの恐怖も一緒に、夢のような出来事にしてしまったんだ。



