「…レオンハルト、江架を連れて遠くへ行け」
「な、なに言って、」
「いいから行けッッ!!!」
「っ、」
すべての魔力を解放し、おれに背中を向けたシド兄ちゃん。
恐怖を無理やりにも抑えこむ覚悟だった。
光魔法、氷魔法、風魔法、治癒魔法。
そのすべてを使うことができる特殊属性【光】─ルークス─。
『…江架ちゃん、』
魔法でつくられたシド兄ちゃんの幻影が、おれの腕に抱かれた赤ちゃんの頬を撫でる。
『君はこの先、普通の人間が体験しない苦しみを味わうかもしれない。周りとは違う辛さのほうが多いかもしれない』
「パーっ、ぱっ」
『っ、でも……それでもな、パパとママはずっと君の味方だ。いつだって江架の魔法のなかに存在してるよ俺たちは。…強く、立派に、大きくなれ』
父親だった。
まぎれもなく、彼は父親だった。



