悔しかったんだ。
シド兄ちゃんらしくないと思ったんだ。
これから生まれてくる自分の娘の未来を、悲しいものだと決めつけてしまっているシド兄ちゃんがムカついたんだ。
はあはあと、ここまで子供らしく声を上げたことなんか今までなかった。
「…ふっ、ははっ、……そーだよなあ」
力が抜けたように笑って、パシッと自分の頬を叩いて。
どこか泣きそうな顔もして、「俺の負けだよ」と、シド兄ちゃんは木の棒を再び手にした。
「……本当はな、こっち」
「───…江架」
「八神 江架。…生まれてくる俺と星架の娘で……、お前の妹の名前」
いい名前だ。
こうでなくっちゃと思わせてくる名前。
はやく会いたいと、はやく会って名前を呼びたいと。
おれは初めて心から思った───。



