「……あの人に…会わないと…、あの人しかいない」
「ルス…?」
「江架のことをお願い。僕は探さなきゃいけない人が───」
「待てい」
つよい魔力を持った人間は、言葉で止めてしまえることができる。
相手に無謀を分からせてしまえるのだ。
無理に押し通したとしても意味がないと、諦めを見せてくる。
僕たちの背後から、じゃりっ、じゃりっと、地面をゆっくり歩いてくる老人がひとり。
「とうとうこのときが来たようじゃな」
ピリピリと痺れる全身。
たったひとり、老人がやって来ただけ。
それだけで僕たちを制圧する何かを持っていた。
「…あのババアめ、またひとりでどうにかなると思い込みおって。最悪な結果を招いてどうする」
ふかく被った中折れ帽。
口元を隠す白い髭に、年季の入った杖。
たまたま通りかかった老人ではないだろう。
このときを、この日を予測していた、またもうひとり。



