話題にも出されない。
私から放出された、強大な魔力のこと。
「ルス先輩…、魔法はやっぱり、いろんなことを隠すこともできるの…?」
「…江架は何も心配しなくていいよ」
彼はそう言うだけだった。
夜巳おばあちゃんが作ってくれたお弁当を持って、Sクラスまでの廊下を一緒に歩くお昼休み。
私は学食を利用することはあまりなく、使うとしたらアレフくんがお裾分けしてくれる程度。
おばあちゃんの手料理がいちばん美味しいから、というのは内緒だ。
「隠すというよりは緩和された、と思えばいいんじゃないかな」
「……かんわ…」
「江架」
ふいに名前を呼ばれて、足が止まる。
頭ひとつぶん高い場所から、屈みこむようにふわりと影が落ちてきた。
「ルスせ───、っ…!」
広がった花の香り。
少し前まではお城みたいなお家で必ず嗅いでいた匂いが、今はちょっとだけ懐かしくも思える。



