恋するパンジー


「教室でおれに話しかけてくんの、やめてくれない?」

「え……?」

 なんとも言えない気まずそうな表情の彼をジッと見返すと、目をそらされた。

「上野山さん、同じ委員になってからやたらと話しかけてくるじゃん? 他のやつにはほとんど話しかけないのに、おればっか。だから、上野山さん、クラスのやつらに、おれに気があるって思われてるよ」

 気がある……、とは……?

 意味がわからずぽかんとしていると、竹森くんがゆっくりと立ち上がる。

「おれ、作業する場所変えてもらってくるわ」

「な、んで……?」 

「別に同じクラスだからって、いっしょに仕事しなきゃいけないって決まりはないよな」

「そ、そう……、だけど……。でも……」

 まだまだ、花壇の草抜きには時間がかかりそうなのに……。

 困って引き止めようとすると、竹森くんが顔をしかめた。

「なんか勘違いさせるようなことしてたら悪いんだけど……。最近、あんたに話しかけられるたび、クラスのやつらが『付き合ってあげたら』とか言ってくるし……。正直、迷惑なんだよね……」

 勘違い……? 迷惑……? 

 気がある、って……。クラスのみんなに、わたしが竹森くんを好きだと思われてるってこと……?

 わたし、竹森くんのことなんて、別になんとも……。

 頭の中でいろいろ考えるけど、言葉でうまく言い返せない。