恋するパンジー


 眉を下げて見つめ返すと、 

「上野山ちゃん、おれと付き合ってくれる?」

 千葉先輩がふわっと微笑みかけてきた。

 千葉先輩の笑顔が、わたしの胸を高鳴らせる。

 この告白に、「はい」って答えていいのかな。

 うなずいたあとで、実はドッキリだったとか、勘違いだったとか言われない?

 こんなシチュエーション、今までに経験がなさすぎて、マイナスな考えが浮かんでためらってしまう。

 それに、気になることもある。

「わ、わたし……」

「ん?」

「い、一ヶ月で先輩にフラれたりしませんか……?」

 思いきって尋ねたら、千葉先輩がきょとんとした顔になる。

「どういう意味?」

「だ、って……。千葉先輩は、女の子からよく告白されてて……、一ヶ月単位でカノジョ、変わるって有名……」

「あー、もしかして! 最初に話したときに、上野山ちゃんがおれのこと『有名』って言ってたのって、そのこと?」

 小さくうなずくと、いつも笑ってる千葉先輩がめずらしく顔をしかめる。

「それ、誰が言い出したんだろ。ほんと謎なんだけど。告白は、まあ……たまにされるけど。一ヶ月単位でカノジョ変わるとかウソだし」

「で、も……。先輩、よく女の子と一緒に歩いてから……」

「たまたま話しかけてきたクラスの子とかでしょ。ていうか、おれ、告白したの、上野山ちゃんがはじめてだよ」

 千葉先輩の言葉に、心臓がドクンと跳ねた。