「あのねー、おれ、前からよく、昼休みにひとりになりたいとき、中庭のベンチで寝てたんだ。だから、声かけるずっと前から、上野山ちゃんのこと知ってたんだよ」
「え……」
「上野山ちゃん、いつもひとりでがんばって園芸委員の仕事してたでしょ。上野山ちゃんのクラスの男子の委員は全然仕事しに来ないのに、文句も言わずにエラいなーって思ってた」
前から、中庭のベンチに千葉先輩がいたなんて知らなかった。
花壇の位置からだと、ベンチの背もたれ側しか見えなくて、寝転んでたら誰かがいても気付かないから。
「初めて声かけたとき、上野山ちゃんがあいつに泣かされてんの見てガマンできなかった。上野山ちゃんは、ずっとひとりでマジメに頑張ってたのに……。上野山ちゃんが自分で『ひどい』って言えないなら、おれが代わりに言ってやろーって思った。だから今日は、上野山ちゃんのこと守れて、めっちゃスッキリ! ってことなんだけど……。理由わかった?」
そう言って、千葉先輩がわたしの顔を横から覗き込んでくる。
話し方も態度も軽いけど、千葉先輩のきれいなこげ茶の瞳を見れば、ウソは言ってないってことはちゃんとわかる。
だからこそ、どんな反応をすればいいのかわからなくて困ってしまう。



