恋するパンジー


「あ、え……っと。はい……。美咲、です。でも、似合わないですよね。だから、知らない人には言いたくなくて……。な、名前負け……」 

 ボソボソ話しながら下を向いたら、千葉先輩がつないだ手をぎゅっと握った。

「そんなことないでしょ。美咲って名前、上野山ちゃんに合ってるよ」

 そんなの、初めて言われた……。

 びっくりして顔をあげると、千葉先輩が優しく笑いかけてくる。

「せ、先輩は……、目が悪いんですか?」

「上野山ちゃん、ちょー失礼。おれ、小学生のときからずーっと視力Aだよ」

「そ、そうなんですね」

「あとねー、おれ、さっき下駄箱で上野山ちゃん待ってたときに調べたよ。パンジーの花言葉」

「……」

「わたしを想ってください」

 無言で目を丸くするわたしに、先輩がゆっくりと言葉をつむぐ。

「かわいいよね。上野山ちゃんみたい」

 ふっと目を細めた千葉先輩の表情に、ドキンと胸が鳴る。