恋するパンジー


 廊下にわたしが立っていることにようやく気付いた竹森くんたちが、顔を見合わせておびえた表情になる。 

「あ、え、えっと……。い、いちばん端の、上からふたつめ……」

 気まずい空気の中で、ひとりだけニコニコの千葉先輩。

 おろおろ、おどおどしながらロッカーの場所を伝えると、

「あー、これだ」

 千葉先輩がわたしのスクールバッグを持って戻ってきた。 

「はい、帰ろ〜」

 わたしにスクールバッグを手渡すと、千葉先輩が床に落とした自分のスクールバッグを拾う。

 それから、わたしの手を引っ張って、何事もなかったみたいに歩き始めた。

「あ、あの……、先輩っ……」

 わたしと手をつないで二歩先を歩く千葉先輩の名前を呼ぶと、彼が肩越しに振り返る。

「上野山ちゃんの名前、美咲っていうんだね」

 わたしは、さっきのことでまだ混乱してて。

 壁をグーパンチした千葉先輩の手だって心配なのに。

 千葉先輩がのんきにそんなことを言ってくる。

 千葉先輩は、わたしのせいで竹森くんたちの陰口に巻き込まれたのに。

 あんなふうにわたしのために怒って、変な人だ。