「でもさー、上野山さんって、ちょっと前は、千葉先輩によく絡んでたよね」
「あー、一時期ね。でも、最近全然じゃない?」
「そうなんだ? そういや、さっき、中庭で花植えてる上野山の近くに千葉先輩いたかも」
「えー、また千葉先輩に絡んでるの?」
「竹森、上野山に乗り換えられてんじゃん」
「うざ。最初から、おれはアイツとはなんの関係もないし」
わたしへのからかいと嘲笑。
悪意すらないのかもしれない彼らの会話に、わたしはドアの陰から動けなくなってしまう。
「だけど、千葉先輩、なんであの子に構うんだろうね。モテるのに」
「千葉先輩が、上野山にまとわりつかれてるんじゃない? 竹森も、園芸委員の仕事がって毎週ウザいくらいに話しかけられてたもんな」
「あれは、ほんと迷惑だった」
「だとしたら、千葉先輩かわいそう……」
「だよね。今までの彼女に比べたら、上野山さんなんてイマイチすぎだよ。あの顔で、『美くし』く『咲く』で美咲って。名前負けすぎて、ほんとかわいそう」
からかい。嘲笑。人をバカにする大げさな悲鳴。
それらを黙って聞きながらうつむいていると、
「上野山ちゃん、まだ~?」
ふいに、後ろからぽんっと肩を叩かれた。
振り向くと、いつのまにか千葉先輩が立っていて、顔から血の気が引いていく。