千葉先輩とパンジーの植え替えに使った道具を片付けると、わたしはひとりで、教室にカバンを取りにいくことにした。

 千葉先輩もついてこようとしたけど、さすがにそれは断った。

「あの……。すぐ、戻ってきますっ……!」

 少し不満顔で下駄箱で待つ千葉先輩にペコリと頭を下げると、廊下を早足で歩いて、二階への階段を上る。

 二年一組は、階段のすぐ右側だ。

 教室に近付くと、中から話し声が聞こえてきた。

「そういえば、竹森、今日、委員会の仕事あったんじゃねーの? 中庭で、上野山が花壇になんか植えてたけど」

「ふーん」

「ふーん、て。興味なさすぎ」

「ないだろ。ていうか、アイツに興味あるやつなんているの?」

 聞こえてきたのが、ぐうぜんにも自分の陰口で……。

 わたしは、おもわず足を止めて、教室のドアの陰に隠れた。

 話しているのは、たぶん竹森くんと、彼と同じグループの男子だ。彼らの会話の合間に、女子の笑い声も混ざって聞こえてくる。