恋するパンジー


「か、からかわないでください……!」

「からかってないよ」

「ウソです……、そんなの……」

 千葉先輩から顔をそらすと、最後の苗を植えて土をかける。

「もう、行きます。植え替え、終わったので……」

 使っていた道具をそそくさと片付けて立ち上がる。そうしたら。

「あ、待って」

 千葉先輩も立ち上がって、わたしの手をつかんだ。

「ほっぺに土ついてるよ」

「え……?」

 言われて頬をこすると、

「ちがうよ、こっち」

 千葉先輩が、わたしが触ったのと反対側をセーターの袖でごしごしと拭う。

「……!」

 びっくりして目を見開くと、千葉先輩がやさしい目をして微笑みかけてきた。