恋するパンジー


「あ、の……。退屈、しませんか……?」

 視線が気になって尋ねたら、千葉先輩が「全然」と首を振る。

「楽しいよ。上野山ちゃんのこと見てるの」

「た、のしい……?」

 どのへんが……?

 ぎゅっと眉を寄せると、千葉先輩がククッと笑う。

「上野山ちゃん、いちいち反応おもしろいよね。おれの言ったどーでもいいこと、ひとつひとつマジメに受け止めて、なんか考えてるでしょ。おれ、そういうときの上野山ちゃんの表情、すごい好き」

 ……え? 今、なんて……? 

 す、き……?

 誰が――? なにを――?

 千葉先輩が、さらりと口にした言葉が、わたしを動揺させる。

「ああ、ほら。また、なんか余計なこと考えてるでしょ」

 膝に肘をのせてほおづえをついた千葉先輩が、少しあざとく、にこりと笑う。

 そりゃあ、余計なことだって考えてしまう。

 千葉先輩が、わたしに向かって「好き」なんて言うから。

 千葉先輩からしてみれば深い意味なんてないのかもしれないけど、わたしはドキドキしてしまう。