恋するパンジー


「あ、え、っと、はい……。パ、パンジーの花言葉は、わたし、を——」

 そこまで言いかけて、わたしはハッと口をつぐんだ。

 パンジーの花言葉は、『わたしを想ってください』

 可憐なパンジーにぴったりの、かわいい花言葉だ。

 だけど……。

『わたしを想ってください』なんて。

 よく考えたら、それって、なんだか告白の言葉みたい。

 うかつなことを言って、千葉先輩に勘違いしてるとか、迷惑だって思われたくない。

「わたしを、なに?」

 途中で話すのをやめたわたしを、先輩が不思議そうに見てくる。

「え、っと……。ご、ごめんなさい……。わ、忘れちゃいました……」

 ぼそぼそっと答えると、

「え~、なにそれ。すげー気になる」

 千葉先輩が、軽い口調で笑う。

 わたしは千葉先輩の言葉を無言で受け流すと、残りのパンジーの苗を植えていった。

 そのあいだずっと、千葉先輩は花壇のそばに座って、作業するわたしのことをじっと見ていた。