「せ、先輩……。なんで……」
「それはこっちのセリフ。この頃、ぜんぜん上野山ちゃんに会えないし。水曜日の昼休みもここに来なくなったから心配してたんだけど。曜日も時間もずらしてたんだ?」
千葉先輩がそう言って、わたしの隣にしゃがむ。それから、尻もちついたままのわたしの腕を引っぱって起こすと、わたしの顔をのぞきながら首をかしげた。
「上野山ちゃんは、なんで、おれのこと避けてんの?」
「べ、べつに……、さけて、なんて……」
焦げ茶の瞳にじっと見つめられて、いつも以上にうまく話せず口ごもってしまう。
顔を赤くしてうつむくと、むっと口をとがらせて膨れている千葉先輩の顔が視界の端に見えた。
「上野山ちゃんのウソつき~。こんな会わないなんて、避けられてる以外考えられないじゃん。それに、この前のサッカーの授業も、ぜんぜん見てくれてなかったし。あのときからだよね、上野山ちゃんがおれのこと避けてんの」
「……」
図星すぎて、なにも言えない。
千葉先輩は、わたしがサッカーの授業を見てなかったことに、ちゃんと気付いてたんだ。
ちょっとチャラくて、ふわふわしてて、テキトーなのに。
やっぱり、モテるひとのことはよくわからない。