金曜日の放課後。

 わたしは委員長から渡された花の苗を持って、中庭の花壇に行った。

 園芸委員が活動をするのは、基本的には水曜日の昼休み。

 だけど、わたしが今日の放課後に花壇に来たのは、千葉先輩と顔を合わせないようにするためだ。

 この前、クラスの女子たちから陰口を言われて以来、わたしは千葉先輩のことを避けている。

 千葉先輩が通りそうな場所にはいかないようにしているし、登下校の時間がかさならないようにずらしてる。

 千葉先輩たちのクラスが体育のときは、教室の窓は閉めきって、名前を呼ばれても聞こえないフリ。

 そうやってできるだけ会わないようにしていたら、千葉先輩から「上野山ちゃーん」と軽い口調で呼ばれることも少なくなった。

 千葉先輩からあまり絡まれなくなると、今度はクラスの女子たちの、

「上野山さん、千葉先輩に飽きられたね」
「フラれたんかな」

 というコソコソ話が聞こえてくるようになった。

 千葉先輩に絡まれても、絡まれなくても悪く言われるなんて……。

 なんだか悲しくなってくる。

 きっとみんな、わたしにはなに言ったっていいと思ってるんだ。

 何も言い返せなくても。人前だと緊張してうまく話せなくても。

 わたしだって、ちゃんといろいろ思ってるし、ちゃんと傷付いているのに。