「おれ、次、体育~」
ノートを閉じると、千葉先輩がにこにこしながら手を振ってくる。
うん。体育着着てるし、見たらわかる。
つい笑いそうになっていると、千葉先輩のところに、三年生の男子の先輩が近付いてきた。
「千葉~、遊んでないで、準備手伝え」
そう言って、彼が千葉先輩のことを校庭の倉庫へと引っ張っていく。
「上野山ちゃーん。今日サッカーやるから、ヒマだったら応援してね〜」
ヒマだったら、って。わたしもこれから授業なんだけど……。
引っ張られながらも、困り顔のわたしに手を振ってくる千葉先輩はなかなかチャラい。
体育の授業で校庭に出ている三年生たちに、ケラケラ笑われている。
中庭で変な出会い方をしてから、千葉先輩はほんとうにわたしに声をかけてくるようになった。
園芸委員の仕事中や、教室移動で廊下を歩いているとき。登下校で会ったとき。
ひとりのときも、誰かと一緒のときも、千葉先輩はわたしを見つければ、今みたいに声をかけてくる。
しかも、まったく人目をはばからない。
きっと、からかわれてるんだろうな……。
中庭で、竹森くんに理不尽に振られて泣いて。ひどい顔してるところ、見られちゃったし。