「上野山ちゃーん!」

 授業のあいだの休憩中。窓際、一番前の席でに座ってぼーっとしていると、どこかから千葉先輩の声がした。

 すぐに千葉先輩だってわかったのは、わたしのことを「上野山ちゃん」なんて呼んでくる人は彼しかいないから。

 今聞こえてきた声はいったいどこから……。

 廊下じゃないし、外からかな。

 空気の入れ替えのために少し開いていた窓を大きく開く。

「上野山ちゃーん、ここ、ここ!」

 メガネの縁を押さえながら、窓枠から顔を出すと、すぐ真下で体育着を着た千葉先輩がいた。

 まさか、下から窓際に座るわたしが見えたのかな……。

 おどろくわたしのことを見上げて、千葉先輩が両腕を大きく振り回す。