恋するパンジー


「は、はなして、くださいっ……」

「ちょっと、ちょっと。暴れないで」

 腕をブンブン振って逃げようとしたら、千葉先輩がへらへら笑う。

 千葉先輩の腕は、もしかしたらわたしよりも細いんじゃないかって思うくらいなのに、案外力が強い。

 わたしがどれだけ暴れても、にこにこしたまま手を離さない。

 そういえば、千葉先輩には他にもウワサがあったっけ。

 細身で、見た目もふわっとしてゆるめだけど、実は空手の黒帯所持者だっていうやつ。

 千葉先輩は、本気を出せばケンカも強く、怒らせたら怖いんだとか……。

 でも、このウワサは都市伝説的な感じで。ほとんどの人が信じてない。

 だけど、この力のつよさ。

 もしかしたら、ウワサはほんとうなのかもしれない。

 千葉先輩相手に、ぐぬぬっと抵抗していると、彼が暴れるわたしを少し強引に引っ張った。