恋するパンジー


「ひ、ひどいですよね……」

 わたしは竹森くんに告白したわけでもないのに。勝手に決めつけられて、あんなこと言われて。

 うつむいてつぶやくと、千葉先輩が腰を曲げてわたしの顔を下から覗き込んできた。

 きれいなこげ茶の瞳で見つめられて、ドキンとする。

 ごくんと息を飲み込むわたしを、千葉先輩はものすごくマジメに、じーっと見てきた。

 な、なんか……。距離近いな……。

 そうやって意識したら、今度はじわじわと顔が熱くなってきた。

「あ、あ、あの……」

 おどおどして一歩後ずさると、千葉先輩が神妙な顔で口を開いた。

「うん、やっぱりひどいよ。キミの顔」

「……へ?」

「その顔じゃあ、フラれても仕方ない」

「……」

 千葉先輩の言葉に愕然とした。

 わたしはてっきり、千葉先輩が同情してなぐさめてくれたんだと思ったのに……。違ってた。

 優しいって言われてる千葉先輩も、竹森くんたちとおんなじ。あっち側の人間だった。

 そりゃ、そうだよね。

 千葉先輩はモテるし、ふだんからかわいい女の子ばかり見てるんだ。

 わたしみたいに、地味で、性格も暗くて。見た目だってイマイチで。

 おどおどしててて人とうまく話せなくて。話しかけるのも迷惑だって言われるような女子の味方をしてくれるはずがない。

 なにを自惚れてたんだろう……。

 自意識過剰な自分がはずかしい。

 熱くなった顔が燃えちゃいそう。

 いてもたってもいられなくなって、走って逃げようとしたら、千葉先輩に腕をつかまれた。