ーー 数日後。







雪美は今日も、また蓮稀に助けて貰った川の横を歩いていた。



" 蓮稀とまた会えないかなー?"



タンポポが花から綿毛に変わる季節…


蓮稀のことを考えながら綿毛を見つけた雪美は嬉しそうに駆け寄ると、花を摘まずにしゃがんで一生懸命何度も息を吹きかける。



「摘み取って飛ばしたらいいのに… 」



聞き覚えのある声が背後から聞こえて思わず雪美は " 蓮稀!" と、嬉しそうに振り返る。



待って。やだ私ってば、恋をするとこんなにもテンション上がるんだ… そんな自分に少しだけ照れ臭さを感じる。



「綿毛でも咲いているのよ、可哀想… 摘んでしまったら… 」



「地面に息を吹きかけて遊んでるのかと思ったよ」



笑いながら冗談を言う蓮稀。



ムッとする雪美の反応を見た蓮稀は笑いながら私の体を立たせ、しゃがんだことで着崩れた着物を直してくれる… そんな行動にさえもドキドキしていた。



「名はなんと言う?」



「あ、助けて貰って名前を言うのを忘れてた… 私は雪美、真っ白な雪に美しいって書くの!」



「雪美... いい名前だがお転婆な雪美には似つかぬ名前だな」



くすくす笑う蓮稀に対してムスッとしながら " 名前.... 私は聞いてたのに自分は名乗らないとかダメダメじゃない!" と、内心落ち込み…



頭の中で一人反省会を繰り広げていると蓮稀は突然、私の顔を覗き込む。



「え// な、な、なんですか!?」



顔が近い… 雪美は赤く染まった頬を隠すように自分の顔を触る。



雪美の顔をじっと見つめる蓮稀は " 変な顔をしていたから " と、言いまた雪美をからかう。



「もう!」



「…もう捕まるんじゃないぞ」



おすずに捕まった、この前の事だろう。蓮稀は雪美の頭をそっと撫でその場を後にした。