煙の中には山が映っていた。アルストロメリアの中で一番標高が高いと言われたいる山である。イザベルは、フフンとヴァイオレットを見て笑いながら言った。

「シャーデンフロイデの居場所は、この山の頂上にある洞穴です。ここにシャーデンフロイデが入っていくのを使用人が確認しましたわ」

「……イザベル様はシャーデンフロイデがどこに行ったのか、自分では確認されなかったのですか?」

サクラの問いに対し、イザベルは「確認なんて誰がしても一緒でしょう?」と首を傾げる。そして、髪をどこか気怠そうにかき上げながら続けた。

「私はランカスターの一人娘ですよ?そんな私が獰猛なシャーデンフロイデを追って怪我をしたらこの美貌が失われてしまうかもしれませんわ。私はあなたとは違って、野蛮な戦闘魔法が得意ではありませんの」

フェリシアーノがサクラを選んだことを根に持っているのか、イザベルは側近として鍛えられているサクラを小馬鹿にしたように笑う。サクラは無表情のままだったが、オリバーは「おい!!」と声を荒げ、フェリシアーノが素早く彼の腕を掴んで止めた。