イヴァンの暴走した魔法からサクラを守っていたのだろう。彼女の腰を抱き寄せているフェリシアーノが言った。

「ヴァイオレット、そしてイザベル嬢、この国をシャーデンフロイデが暴れ回っているのは知っているよね?」

ヴァイオレットとイザベルは同時に頷く。フェリシアーノは口角を上げ、言った。

「君たち二人にそのシャーデンフロイデの居所の調査を頼もう。先にシャーデンフロイデの居所を突き止めた者にイヴァンとの結婚を認める。ヴァイオレットが勝ったらイヴァンとの婚姻関係を続け、イザベル嬢が勝ったらヴァイオレットとイヴァンは離婚する。これでどうかな?」

ホールにいた誰もが驚きの声を上げる。突然責任ある調査を言われ、ヴァイオレットの胸にズシリと重いものがのしかかる。

(私、魔法なんて使えないのにイザベル様と結婚を賭けて戦うの?)

ヴァイオレットはイヴァンを見た。イヴァンは友人の突然の言葉に呆然としている。その顔を見ているだけで、ヴァイオレットは幸せが込み上げてきた。

(怖い。でも、この幸せを手放したくない!)

答えは一つである。

「はい、構いません。シャーデンフロイデの居所を突き止めます!」

ヴァイオレットの凛とした声がホールに響いた。