「こら、顔を逸らしちゃダメだろう?僕を見て」

イヴァンにすぐに言われ、ヴァイオレットは「すみません、恥ずかしくて……」と言いながらゆっくりと顔を上げる。イヴァンと視線が絡み合った。

「フフッ、目が合った。綺麗な目だね」

優しげにイヴァンの目が細められ、その頰が赤く染まる。ヴァイオレットは再び恥ずかしさが込み上げ目を逸らしたくなったものの、まるで石像になってしまったかのようにイヴァンから目を離すことができない。

「あっ……」

ヴァイオレットは何も言えないまま、顔を真っ赤にしたままイヴァンと踊った。踊れるか心配だ、とイヴァンは言っていたものの、問題なく踊れている。リードがしっかりとできており、ダンスが苦手でゆっくりとしか踊れないヴァイオレットなのだが、きちんと踊れている。

(ランカスター家の屋敷で先生に教えてもらった時は、先生の足を踏んでばかりだったのに……。不思議だわ)

まるで魔法にかけられたかのように、迷うことなくヴァイオレットはステップを踏んでいく。それが不思議で、しかしイヴァンと踊っているこの時間が恥ずかしくも楽しい。