ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼

 私はマイクに向かって目を閉じる。息を吸って、吐いて、吸って、

「♪~……」

 私のしゃがれた歌声が体育館に響き始めると、観客が一斉に息を吞んだ。

「♪~♫♪~」

 あの日、一人ぼっちで歌ってた歌。
 わかってくれる人なんて誰もいないって思ってた。
 でも篠井くんに出会って、こんなにたくさん聞いてくれる人と出会えた。
 もうなにも怖くない。
 ただ純粋に、ここに立たせてくれた皆へ届けたい。優しい曲を、私の歌で。

「♪♫~……~♪」

 私を押しつぶそうとしていたはずの世界が、私の歌声を響かせる。皆を巻き込んでキラキラ輝き始める。

 楽しすぎて、鳥肌が立って、眩暈がした。

 最後に巨大な渦みたいな大歓声を聞きながら
 このキラキラを世界中にまき散らしたいと思った。
 
「ありがとうございました!sushiumaiでした!」

 そして、やっぱりこの名前は変えたほうがいいな、と思った。