ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼

 ワクワク、キラキラした目。嬉しくて仕方ないっていう目。私と一緒に涙ぐんでる人までいる。
 どれも私を蔑むような目じゃない。可哀想な人を見る目じゃない。

「音葉ちゃん可愛いよ〜!」「大好きー!」「頑張れ音葉ー!」

 ポロッと涙がこぼれた。

「みんなお前の歌が聞きたいんだってよ。歌ってやれよ。親父のギターなんかなくても大丈夫だろ。俺がいるし」

 篠井くんのまっすぐな言葉は、いつだって絶望を希望に変える。

「っ、うん……っ」

「ほら。深呼吸」

 篠井くんと一緒に息を吐いて、吸って、吐く。
 フッと笑った篠井くんが立ち位置に戻った。

「いくぞ」

「うん…っ」

 そして、篠井くんのギターのきれいな音色が体育館に広がった。