「経年劣化だ。修理出さないと治んねー」

「そ、そんな……」

 その時、みんなの声が聞こえた。

「すーしうま!すーしうま!」「キャーッ!篠井くーん!」「音葉ちゃーん!」

 呼ばれてる……!

『えー、次の出演者はみなさんお待ちかね、sushiumaiです!どうぞー!』

 ワァァ、と大きな歓声と拍手。

「……どうする」

「……」

「辞退するか」

 ハッと顔をあげると、篠井くんは私の目を怖いくらいにじっと見る。

「言えばきっと軽音部が大喜びで代打してくれる。話してくるか」

 こうしてる間にも、私たちを呼ぶコールが響いている。

「音葉ちゃーん!!」「音葉ぁーーー!!」

 今までこんなに名前を呼んでもらったことがあっただろうか。

 ずっとひとりぼっちだった私の歌を聞きたいと思ってくれてる人たちが、本当にいるんだ。

 ……答えたい。

『恥かきに行ってらっしゃい』

 私はゴクリ、息を呑んだ。

「出る……っ。ギター、なしで」

 篠井くんはしばらく私の目を見つめた後、ゆっくりと頷いた。