ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼


 
 
 しばらく走って辿り着いた人気のない土手で、崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。

「はぁ……はぁ……っ、苦、し……っ」

 こんなに走ったのはいつぶりだろう。

 地面にたくさん生えたクローバーとにらめっこしながら懸命に息を整える。
 すると、遠くの方で楽しそうにはしゃぐ女の子二人の声がした。
 これから帰るところなのか、仲良さそうに笑いながら土手沿いを歩いている。

「……いい……なぁ……」

 プツンと何かの糸が切れた。

 今日の悲しかったこと。今までの色んな悲しかったこと。

 全部が体にずっしりとのしかかって、押し出されるようにしてホロホロと涙がこぼれ落ちた。


 私、津木沼(つぎぬま)音葉(おとは)、中学一年生。

 ギターで弾きながら歌うことが趣味の、元不登校児だ。