ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼

「っ、♪~……、……」

 あ だめだ
 首を絞められたように苦しくて、声を出すどころか、息も出来ない。

「っ……、」

 歌えない。

 泣かないように必死に耐えていると、そんな私を見開いた無機質な目で見据える部長がいた。

「っ、」

 歌わなくちゃ……!

 そう思ってなんとか力を入れて声を出した。
 すると、音は思い切り外れて裏返ってしまう。

「……ブフッ」

 幹部の一人、一番端にいる男の先輩が噴きだした。

「ちょ、なに。笑わせに来てる?」

 私に聞こえるほどの音量で、でも私にではなく幹部同士で話している。

「てか声きったな……酒焼けしたババアかよ」

 言いたい放題の男の先輩に、隣の女の先輩が「ねぇ、ひどい」と言いながらやっぱり笑う。