死んだキミに伝えたかった言葉

相島と付き合って2週間経った今日。
別に付き合う前と、変わりはない。
ただひとつ変わったことがあるとするなら、放課後部活がない日はクラスに残り、2人だけで数学の問題を解く。俺が教えて、彼女が書く。数学が苦手な彼女は計算が遅く、全然進まないが俺は放課後のこの時間が好きだ。
普段、勉強を教えて欲しいなんて頼まれることがない為、嬉しい。
でも、これは"恋人"らしいのだろうか?
…と昔のことを考えていると、俺の目の前に座った彼女がふりかえり「やっと解けた」と問題集を見せてくる。いつも通り、丸つけをするが、どうも今日は調子が悪いらしい。
いつもなら、10問中3、4問正解だが、今日は10問中9問不正解だ。
なぜこんなに酷い結果となるのか原因を探る為、昨日解いた問題今日の問題とを比較した。昨日の問題は整数だけだったが、今日の問題は分数中心だ。ということは、彼女は分数の問題が解けない。そういうことだろう。
しかし、あまりの酷い結果に俺はつい
「あぁ、酷いのは特に分数だな。小学生レベルもできてない…算数の授業受けてないのか…?」と零してしまった。
すると、彼女は目を泳がせながら「算数の時、教室に居たは居たんだよ?でもね、絵描いてたらね、知らない間に授業が…ね?」と言った。
また、このパターンだ。自分で困るとわかっておきながらこの女は、授業中に絵を描くことをやめない。授業中の落描きは良くないが、それを持続する、持続力は彼女の長所のひとつだろう。そう考えていると、突然教室のドアが開いた。入ってきたのは隣のクラスの担任だ。「おう、相島に姫川!勉強会か?」と聞いてきたので真顔で「はい。」と答えると、先生は何故か大笑いして、「はっはっはっ。いいぞお前ら、もっと青春を満喫しろよ!!」と言い残し、教室を出ていった。
先生が教室を出ていくと、彼女は大笑いしながら「先生、めっちゃ冷やかしに来ただけじゃん!」と言った。「冷やかしぃ!?」俺は驚きのあまり2人しかいないこの教室で叫んだ。
すると、同じ階の廊下の隅で腕立て伏せをしていた卓球部が、全力疾走で1年3組に入ってきた。1年3組の卓球部員が「何事!?」と大声をあげ、扉を勢いよく開けた。「ってあれ?姫川とめっちゃ爆笑してる相島?こんな時間まで何してんの?」と教室に入ってきた。
「勉強会だけど…」と答えると、山野は「偉っ!マジかよ…まぁ勉強、頑張れよ」と俺の肩を1回叩いてから、教室を後にした。
俺はぼそっと「山野も俺たちのこと冷やかしに来たのか…?」と呟いた。それを聞いた彼女は「あれは普通に姫川さんの悲鳴に驚いただけでしょ」と彼女は笑っていた。
その日はそれ以外何もなかった。
またいつも通りの1日が終わったな。
と、そう思っていた。
まだこの頃の俺は大切な物を何も知らなかった。