「なっちゃん」
突然現れた私の顔を見るなり妹は一瞬で眉を下げた
「お見舞い忘れちゃった」
胸のモヤモヤを誤魔化すみたいに笑ってみせたけれど
「お見舞いなんて要らないから座って」
妹の目は誤魔化せなかった
「うん」
ベッドの脇に折りたたみ椅子を開いて腰掛ける
私の様子を目で追っていた椛は
「何かあったんでしょ」
ほら、と私の手を取った
「・・・うん」
「泣いていいよ」
「・・・え」
握った手に力を入れた椛は
「だって、なっちゃん泣きそうだもん」
不安定な私を見抜いた
「・・・も、みじっ」
それが引き金になり、涙腺が崩壊した
ポロポロと溢れる涙は身体中の水分を集めたみたいに止まらない
妹なのに椛は昔から精神年齢が私より高くて
『どっちがお姉ちゃんなんだか』
なんて言われ続けてきた
悔しい気持ちも少しはあったけれど
椛の隣はそんな気持ちを吹き飛ばしてしまうほど心地良い
いつもは大きなお腹を撫でる手が私の頭を撫でる
「我慢したらブスになるからね」
ケラケラと笑いながらもその手は温かくて
金村茉莉乃のことを吐き出すのに時間は掛からなかった