リヴィ・スノウはやわらかな嘘をつく


「え……?」
 彼女は、レインスの顔を見た。
 青白い肌は、だんだんと生気を取り戻していく。リヴィは彼の胸に耳を当てた。

 はじめは小さな鼓動が、次第に力強く脈打ちだす。新しい血が彼の中を駆け巡る。魔障の痣がみるみる消えていくのを、リヴィは信じられない表情で見つめていた。

「う、そ……、」
 半分、ダメだと思っていた。リヴィはもう、彼の後を追うつもりだったのだ。

「リヴィ……。そんなこと、しなくていい」

 優しく、穏やかなこえ。
 リヴィがあきらめかけた声が、レインスの声が聞こえた。彼の声はリヴィの考えを見越したかのようだ。

「そんなことをしたら、私は貴女と共にいられなくなってしまうだろう?」

 不満げな口調は、でも、とても愛しそうにリヴィの耳に囁かれる。
 レインスは腕を差し出し、リヴィの背中を抱きしめた。

「レインス様……っ、レインスさま!」

 歓喜の声をあげて、リヴィはレインスの胸に飛び込む。

「いきて、いきて……!よかった……」
「ああ、ありがとう。……どうやら、魔障があったおかげで、この身体はここまで持ち堪えられたようだ」
「魔障のおかげ……? も、もしかして」

 彼女ははっとした。
 魔障を受けると生命力は増す。そのせいで痛みも激しいが、身体自体は頑健になる。エミリーの女性用の銃は猟銃ほど威力が強くなかったのも幸いした。

 レインスは厳しい顔でリヴィの腕に触れた。

「彼女は、貴女のところにいったのか……。危険な目に遭わせてしまった、申し訳ない」
「そんな、謝らないで……!それより、よくここのことを覚えていてくださいましたね。ただのお話だったのに」

 レインスは瞳を震わせ、リヴィを抱きしめる。
「そんな。貴女とのことは全て覚えている。こえも、会話も、そして、肌のぬくもりも」

 彼はリヴィの手に口付けた。
「生きて貴女にあうために、ここに来たんだ。また、助けられてしまったが……」

彼はエミリーにわざと撃たせた。完全に死んだと思わせるため。