リヴィ・スノウはやわらかな嘘をつく


 花火の上がる街を走る、はしる。

 街の最高級の宿へ入り、エミリーの部屋へ駆け込んだ。

「レインス様!」

 恐ろしい予感のまま、彼を探したがそこには誰もいない。

「レインスさま……? どこ?」

 彼女はおろおろと部屋を見回す。血が、ポタポタと落ちている。そのまま窓の外へつづいていた。彼女は血の跡を追いかけた。そばの馬小屋に続いている。

「どこへ、どこへ行かれたの? レインス様……!」

 医者だとしたら、わざわざ馬に乗らなくてもすぐそばだ。そのとき、今夜最後の花火が大きく打ち上がる。夜空に流れ落ちる金色の火花とともに、彼女の脳裏の記憶が鮮やかに蘇った。

『アビダル大樹で、命を落とした戦士が蘇ったという伝説まであるのですよ』

 森だ。
 レインスはきっとあの大樹へ向かったのだ。わずかな奇跡を信じて、エミリーに撃たれたのだ。
 生きる望みを持って。

 リヴィは馬に飛び乗った。花火は終わり、見物客が家路へと向かう中、彼女は森へ向かう。

「いそいで、お願い……おねがいよ、レインス様!」