リヴィ・スノウはやわらかな嘘をつく


 熱に浮かされたようにレインスの顔を見上げたとき、強く唇を押しつけられた。熱い。彼の唇は赤く、熱い。まるで獣の赤い舌のようだ。

噛みつくような口づけ。

互いの息が重なりあうたびに、リヴィの頭は熱く、燃えるようにじんじんとする。

(こ、っ……こんな、口づけ、はじめて……)

 唇を重ねるという経験さえ彼女は乏しいのだ。こんなにも、甘くて、とろけるような幸せを感じられるものなのだろうか。

「す、まない……っこんな、こんなふうに……っ」

 彼は苦しそうに声を絞り出す。だがそれもやがて、熱い吐息にかわった。リヴィは必死で彼の唇を受け入れた。彼の唇はリヴィの白い首筋へ、肩へ、そして鎖骨へと稜線をなぞる。ちゅ、ちゅ、と、レインスの唇はリヴィの肌を味わう。

「やわらかい。きもちいい。リヴィ……。貴女は、なんて、いい匂いなんだ」

 彼の動きが不意に止まり、声音が変わった。

 リヴィはおそるおそるレインスの顔を見上げる。もしかして、経験のないことがばれてしまったかしら。

 そこには普段の理知的で穏やかな彼はいなかった。
 劣情に瞳を黒く染め、魔障の腕は紋章のように黒紫の痣を浮かび上がらせる。

 美しく凛々しい顔は、獰猛な野獣のようにぎらりと輝いて、リヴィの瞳を捉えていた。

 不意に、体が持ち上がる。膝下に腕を差し入れられたかと思うと、リヴィは寝台へゆっくりと横たえられた。

「もう、止められない。私を蔑んでくれていい。自分を、抑えることができない」