リヴィ・スノウはやわらかな嘘をつく


 レインスの喉仏がこくりと音を立てた。既に、瞳には妖しく濡れる光が何度も映り込んでいる。始まっているのだ。

「だ、だめだ。スノウ殿。……貴女は、貴女の身体はそんなことに使ってはいけない」

 彼は歯を食いしばって顔を背けた。リヴィは魔障のあるほうの腕をとった。その手のひらをゆっくりと衣越しに胸の膨らみへと重ねる。びくんと彼の指が震えた。

「や、やめるんだ。こんな、ことは許されない……」
「大丈夫です……。これまでも何度か、こうして治療してきましたから」

 大嘘だ。誰にも触れられたことなどない。けれども、彼女は微笑んだ。なるべく妖しく、そう、たとえば娼婦のように見えるように。

「最後まで、治療を続けさせてくださいませ。お願いいたします。アルベルト・レインス騎士団長さま」

 彼女はそっとレインスの胸に寄りかかった。彼の心臓の音がリヴィにまで響く。それはゆっくりになったり、異常に速くなったり。彼のなかで、理性と本能がせめぎ合っている。

「わ、私は、このような形で貴女を……つもりは……っちゃん、と……っ」

 レインスの言葉は荒い息に覆われ、もはや途切れ途切れだ。劣情と欲が理性を凌駕しているのだろう。

魔障の後遺症なのだから、彼に非はない。だがそれでも、レインスは必死で欲に抗う。胸に置いた手を苦しそうに離そうとするレインスに、リヴィはさらに強く胸を押しつけた。

ストールがはらりと床に落ちた。リヴィの肩があらわになる。

 もう、引くことはできない。彼の瞳の熱に、シャツから立ち昇る男の匂いに、リヴィのどこか奥でも火がついてしまったのだ。

「これは、治療です……どうか、どうか、レインス様……んぅっ」