旧校舎に戻った舞子さんは
「今日はごめんなさい。恭平さんはお祭りに行ってきて」
「今はひとりにしてほしい」
と繰り返すばかりだった。
「舞子さんは俺と行くのが嫌だったすか?」
「ちがうの」
「じゃあ、何が?」
段々と自分がいることで、
事態が悪化していることに気づいてきた。
舞子との関係が崩れてしまうような、
危うさが空気に滲んでいる。
浴衣を脱ぎ、着てきた学校指定のジャージに着替える。浴衣の畳み方はわからないから、手でしわを伸ばして、広げて机に置いた。
「舞子さん、俺、先に帰りますね。りんご飴はお礼です」
そう言って、恭平は立ち去った。
足音がどんどん小さくなり、消えた。