「『お兄ちゃん』って呼ぶのは花子ちゃんだけで十分だろ?」
「じゃ、じゃあ、私はなんて呼べばいいの?」

「健太って呼んで?」
急に呼び捨てなんて!

ドキドキしてとても無理だ。
顔を真赤にしてうつむいていると、茂みの奥から子猫が顔を見せた。

真っ白な毛に葉っぱやほこりがついている。
「こいつ、シロにそっくりだ。絶対にシロの孫だと思う」

「本当だ!」
茂みから出てきた子猫はクンクンと匂いを嗅ぎながら近づいてくる。

そして人懐っこそうに健太の足元にすり寄ってきた。
「そんなに人懐っこいと知らない人に連れて行かれるぞ?」

健太は猫をなでながら言う。
猫はそんなこと知ってしらずか、撫でられて心地よさそうに目を細めている。