「そんなの知らない!」
うわぁん! と大きな声で泣いてその場に座り込んでしまう花子。

絵美はただうろたえてそれを見ていることしかできななかった。
「なにしてるんだ!」

その声にハッとして振り向くと、隣の家から健太が出てきたところだった。
険しい表情で笑みを睨みつけている。

「ち、違うの健太お兄ちゃん、これはっ」
「なにが違うんだ。さっきからずっと部屋の窓から見てたんだぞ」

そう言われて二階へ視線を向けると、カーテンが開いていることがわかった。
あそこから見られてたんだ!

「だって、私の万年筆がなくなって、だからこの子が盗んだんだと思って!」
「花子ちゃんが盗んだだって? そんなことあるはずないだろ。こんなに泣いて、可哀想に」