まだなにも言っていないけれど察したようにお父さんがため息を吐き出す。

「花子は絵美ちゃんのものをなんでも欲しがるんだろう?」
「知ってたの?」

驚いて聞くと、「花子はいつもそうなんだ」と、答えた。

「きっと転校が多かったことや、前のお母さんと離婚したことが原因なんだと思う。

仲のいい友達の家に行ってはあれがほしいこれがほしいと、なんでもかんでも欲しがるようになってしまってね。何度怒ってもやめないんだ」

「それって精神的なものってこと?」
質問したのはお母さんだった。

お母さんも深刻そうな顔をしている。
「たぶん、そうなんだと思う」

心の奥に傷をおっているから、それがこんな風に表にできてきてしまっているのだと言う。

そう思うと花子ちゃんを責めることができなくなってしまう。
かわいそうだな。
そんな風に同情してしまう。


「絵美ちゃん。大切なものはお父さんの金庫に保管しておくといい。部屋には置いておかないように」

そう言われて、絵美は素直に頷いたのだった。