その日の放課後、被服室に行くと陽大くんがいて、私に聞いてきた。

「元気ないけど、なんかあった?」

 クラスの中で浮いていて、クラスメイトにもあんまりよく思われていなさそうなことは内緒にしていたかった。今日も手芸部では何事もなかったかのように平然として過ごそうと思っていた。

 でも――。

 陽大くんが気にかけてくれて。陽大くんの優しさに触れていると、急に悔しさや悲しさが込み上げてきて、泣きそうになってきた。

「どうしたの?」

 急な私の変化に、陽大くんが驚いた顔をした。あとから被服室に入ってきた手芸部のメンバーもこっちをチラチラと見て気にしている。

「実はね、クラスの人たちにコンテスト出ること知られて、そしたら……」

 朝起きた出来事を、すみずみ陽大くんに話した。

「そうだったんだ……」

 陽大くんは腕を組み何かを考えている様子だった。

「本気で一緒に見返してやろう!」
「見返すってどうやって?」
「バカにしてくる人たちが驚くぐらいに変わって、キラキラして。コンテスト優勝すればいいんだよ」

 自信満々な様子の陽大くん。

「私たちが地味なのは本当だし、優勝なんて……」
「大丈夫、一緒に頑張って優勝しよ?」

 そう言いながら陽大くんはマスクを外した。目が隠れるくらいの長い前髪も横に分けた。そしていつもは猫背な背筋を伸ばし――。

「「えっ?」」

 私たちは驚いて同時に声を上げた。

 だって、今目の前にいる陽大くんはいつもの地味な陽大くんじゃないから。

 だって、今、目の前にいる陽大くんはすごくイケメンっ!