一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

「こんな夜分に申し訳ありません」
「いや、それは別に構わない。しかし、話とは一体なんだ?」

 訪ねてきた私を、マグナス様は快く迎えてくれた。
 しかし部屋に入ってからすぐに、私は違和感を覚えていた。先程からずっと、人の気配を感じるのだ。
 それがラナーシャであるかどうかは、定かではない。しかし例え誰が部屋にいたとしても、私のやるべきことが変わる訳ではないので、特に気にする必要はないだろう。

「単刀直入にお伺いします。あなたとメイドのラナーシャは、どういう関係なのですか?」
「何?」
「あなたの態度の節々からは、彼女に対する特別な感情を読み取ることができます。しかし一方で、彼女はいつも何かに怯えている。それが気になって、私はあなたを訪ねてきたのです」

 前置きは無駄だと思ったので、私は今まで自分が考えていたことを素直に口に出した。
 マグナス様は、明らかに動揺している。目が泳いでいるし、やはり彼とラナーシャの間には何かしら特別な事情があるようだ。

「彼女と浮気しているというなら、別に構いません。私とあなたは一年で離婚する契約結婚を結んでいますからね。ただ私が気になっているのは、あなたがラナーシャに暴力を振るっているのではないかという点です」
「……なんだと?」