一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

 基本的に私は、マグナス様に深入りする気はない。一年で離婚する相手とは、良き隣人でありたいからだ。
 だが、もしも彼がラナーシャに対してひどいことをしているなら、黙ってみているつもりなんてない。それは私の矜持に反することだ。

「なんてかっこつけていても仕方ないか。まあ、私にどこまできるかはわからないけれど……」

 とにかく私は、マグナス様に話を聞いてみることにした。
 私が考えていることが、勘違いであったならそれはそれでいい。
 例え二人が親しい関係であっても、良き隣人として過ごせると思っている。というかその場合は、隠される方が気分が悪い。

 もしも私の考えが正しかったなら、何がなんでもラナーシャを助けたいと思っている。
 権力なんてものはそれ程持っている訳ではないが、頼れる伝手がない訳でもない。色々と捨てることになるかもしれないが、まあその時はその時だ。

「来て早々に契約結婚を持ちかけられて、今度はこんなことになるなんて、私もついていないのかしらね……ふふっ」

 私は、少し自嘲気味に笑ってしまった。
 どうやら私の人生に平穏というものは、中々訪れてくれないらしい。
 そんなことを思いながら、私は自室を出るのだった。