一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

 夕食と入浴を終えてから、私は自室に戻って来ていた。
 ベッドの上で考えるのは、マグナス様とラナーシャのことだ。あれから二人のことを観察して、色々と理解したことがある。

「特別親しい、と思ってしまうわね。少なくとも、他の使用人とは違う……」

 よく観察してみると、マグナス様のラナーシャへの対応は他の使用人とは異なっていた。
 なんとなく彼女のことを優遇している気がする。隠そうとはしているのかもしれないが、その態度から私は差を感じてしまった。

「男がメイドを優遇する理由なんて一つよね……考えてみれば、彼女は使用人の中でも特に若いし」

 マグナス様は、恐らくラナーシャと特別な感情を抱いているのだろう。それが片思いであるか、はたまた既に関係ができているのかはわからないが。
 ただそれ自体は、特に問題がある訳でもない。私達は一年で離婚する契約結婚だ。彼が誰かと関係を持っていても、私としては構わない。もちろん、多少の軽蔑はあるが。

 しかしながら、ラナーシャの怯えが気になる。
 彼女は、マグナス様の名前を出した時に大きく反応した。それは、ラナーシャが彼に恐怖を感じているということなのではないだろうか。

「清い関係なら……いや、元々清い関係ではないけれど……」