一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

「えっと……そうだ。あなたの名前を聞いていませんでしたね」
「……私は、ラナーシャと申します」
「ラナーシャさん、ここにはあなたの他に何人の使用人が?」
「アラティア様が連れて来られた方々を含めて十人がいます。ただ休日などがありますので、屋敷に常駐しているのは七人といった所でしょうか」
「なるほど……」

 私は嫁ぐにあたって、使用人を三人連れてきた。
 それ以外は、全てマグナス様側の使用人だ。その人達のことを、私は何も知らない。
 その使用人達の間で、何かがあって彼女はこんな態度なのだろうか。あるいは、その原因はマグナス様にあるのだろうか。

「……あなたは随分と若そうですね? 失礼ながら、年齢は?」
「今年で十八歳になります」
「十八……いつからこの仕事を?」
「……えっと」
「ああいえ、すみません。個人的な質問でしたね」

 私の質問に、ラナーシャさんは言葉を詰まらせた。
 どうやら、彼女に何かしらの特別な事情があることは間違いないようだ。それはもしかしたら、家庭の事情なのかもしれない。

「……こちらには住み込みで?」
「はい。働かせていただいています」
「そうですか。これから、どうかよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ……」